「AIっぽい文章」とは何かについてド素人が本気で考えてみた AIで生成された文章が氾濫する時代。文章がAIであることを見抜いたり、あるいは文章のAIっぽさを消したりすることの需要が高まり、その結果「AIっぽい文章とは何か」について考える機会は増えてきた。 有名なものとして、「Xではなく、Yだ」というパターンの多用がある。しかし実際には、この構文に厳密に当てはまらない表現でも、 「ここで重要なのは、~ではないことです。むしろ~」 「ここで誤解しないようにすると~」 という、本質的には似たような表現が出てくることもある。つまり、真の問題は「誰もするわけがない誤解を先回りして解こうとする」ことにある、と考えることができる。 表面的なパターンに縛られない、より本質的な「AIっぽさ」とは何なのか。素人なりに考察した結果を列挙してみる。 免責事項 筆者はLLMや言語学等に関しては完全に素人である 具体例は主にAIで生成しているが、実際のやりとりをロールプレイして応答させたのではなく、「こんな特徴があるけど、その例を出して」と言って出力させたものを使っている。なので、割と誇張されていることに注意 よって、実際の実験で裏付けられたものではなく、かなり印象論でしゃべっている 読み手の誤解・感情・考察を先回りして解いたり、共感したり、言及したりしようとするが、それが的を射ていない これは冒頭にも出したとおり、「Xではなく、Yだ」の構文に代表される。 まず、読み手はXという概念をまず処理してからYを処理しなければいけないので、認知負荷が高い。そのうえ、それがあたかも当然の誤解かのように書かれていることで、読み手は混乱する。 そもそもこの構文が有効なのは、それまでの文脈で読者が容易にXであると誤解する場合だけである。 SEOの極意 検索上位を獲得するためには、読者が何に悩んでいて何を解決したいのかという「検索意図」を徹底的に深掘りすることが不可欠です。ユーザーの疑問に正しく答える高品質なコンテンツを用意すれば、滞在時間が伸び、検索エンジンからの評価も自然と高まります。 ここで大切なのは、単にキーワードを詰め込むこと(X)ではなく、ユーザーの課題を解決すること(Y)です。 この例では、直前までで「ユーザーの課題を解決すること(Y)」がいかにに大事か再三説明しているにも関わらず、わざわざ「単にキーワードを詰め込むこと(X)」という、今更誰もしない誤解を提示し、それを解こうとしている。 誤解だけでなく、感情も先回りすることがある。ChatGPTやClaudeを使っていて、「これは少し面白い」「意外な結果です」と何回聞いたことか。私に言わせれば、「面白いかどうかはこっちが決めるから黙っててくれ」だ。 すべての情報が均等に重要かのように書かれている これは、文章のみならず、すべてのAI生成コンテンツに共通する課題である。人間のように目的意識を持たないAIは、すべての情報に対して均等な注意を払って文章を書き、その結果読者に対して、すべての情報に対して均等な注意を払うように強制する。これは、もはや例を挙げる必要すらないだろう。 想定読者が高い確率で知っているであろうことの説明に、必要以上の文字数が割かれている これは非常にシンプルだが、わりとみられる。 Core Web Vitalsの指標『INP』を改善するためのJavaScript実行最適化 現代のWebサービスにおいて、ページの表示速度や操作の応答性はビジネスの成否を分ける極めて重要な要素です。ユーザーはロード時間の長いWebサイトを嫌う傾向があり、わずか1秒の遅延であっても離脱率の大幅な増加やCVR(顧客転換率)の低下を招くことが知られています。検索エンジンもまた、ユーザー体験に優れたサイトを高く評価するアルゴリズムを採用しています。そのため、Webサイトのパフォーマンスを向上させることは、単なる技術的な課題にとどまらず、事業の売り上げに直結する最優先事項と言えます。 読者は、ページの重さが離脱に繋がることや、ビジネスへの悪影響なんぞ、とっくに理解してページを開いている。その具体的な改善方法を知りたいのであって、そんなことを長々と説明されても冗長でしかない。(ただし、これに関してはAI以前からのSEOしぐさではあった) さっきの「誤解の先回り」のことも考えると、LLMは「読者がどう感じているか」を考えるのが苦手であるようだ(私もニガテです……)。だからこそどれだけ説明して、どれだけ説明を省略できるか、正しく判断できないのだ。 想定読者がおそらく知らないであろうことが、一切の説明なしに使われている 上記の逆。LLMは、読者がおそらく知らないはずの概念をなぜか説明せずに使ってしまうことがある。 これは、論文を要約させた際に非常に頻繁に発生する。特定の非常に狭いテーマの、せいぜい2、3本ほどの論文でしか使われていないような用語が、なんの説明もなしに使われたりすることがある。 時には、その論文内で新たに提唱された独自概念さえも一切の説明なしに使うことがある。 従来のRLHFでは応答の多様性が損なわれる課題がありましたが、本手法で感情的アンカー密度(EAD)のバランスを最適化することにより、モデルの有害出力を抑制しつつ安定した出力が得られることが確認されました。 「感情的アンカー密度(EAD)」という用語は、この論文で新たに提案された概念である(という設定)。これが出てくると、「もしかして既存概念かな?」と思って検索する手間が発生してしまう。 足りない情報を調査したり、ユーザーに尋ねることなく、推測で補い、どうとでも取れるように曖昧な書き方にする あなたが個人的にハマっているちょっとニッチな分野において、ちょっとした物議を醸すような意見について、Geminiに、「こういう声があるらしいけど、具体例を教えて」などと聞いてみよう。 大体、3つくらいの例が見出し付きで返ってくる。最初の2つくらいは実際のサイトの引用かもしれない。しかし、大体最後は「SNS・掲示板のコミュニティ」みたいな曖昧な出典がつき、「○○という可能性が議論されることがあります」みたいに、それっぽいがよく見ると実質的なことは何も書かれていないはずだ。Geminiは検索をサボる(時には拒否する)AIだから、よくこういうことが起こる。 これはユーザー自身の情報が必要な際により顕著になる。例えば助成金申請の作文を考えてみる。タイトルだけ与えて書かせた場合、こんなのが出てくるだろう。 プロンプト冒頭の挨拶文がLLMの応答精度に与える影響の解明 本研究は、プロンプト冒頭の挨拶文がLLMの応答精度に与える影響を多角的に分析し、メカニズムの解明を目指します。入力構文の変化に伴うモデル内部の挙動や出力傾向を定量的に検証・評価し、プロンプト設計の最適化を図ります。得られる知見はプロンプトエンジニアリングの精度向上に寄与するだけでなく、より円滑で高効率な人機協調プロセスの実現や各種AIシステムの運用改善に向けて、幅広い波及効果が期待されます。 「多角的に分析」? って具体的に何? 「モデル内部の挙動や出力傾向を定量的に検証・評価」ってどうやってやるの? 「円滑で高効率な人機協調プロセス」「各種AIシステムの運用改善」というのは何にでも言えるが、この研究にはどんな利点があるのか? これらは、本来ユーザーが与えるか、もっと検討が必要なものである。AIは、それらをユーザーに尋ねるのではなく、タイトルだけ見て細部を適当に補完して、どうとでもとれるように曖昧に書く。 もちろん「情報が足りないと思ったら質問して」と指示すれば、もう少しマシなのが出てくるだろう。だが、ほとんどの人はそんなことしないのだ。 ロジックの強さを追求する代わりに、具体例の数に頼る LLMは、事例の検索は非常に得意だが、ロジックの組み立ては苦手である。また、トピックに対する網羅性を非常に重視している。その結果、論理の深堀りをサボり、事例を列挙して済まそうとする傾向がある。 一部のモデルでは、箇条書きにかなり多くの項目を並べることでこれが行われる。 以下は実際はChatGPTの回答である。文脈は、「人間の論理的思考の成長にはとんちやなぞなぞをやった経験が欠かせないのでは? それをAIでやった研究はあるのか?」と聞いた。それに対して既存の研究を紹介し、新たな実験を提案する部分でこんなのを出してきた。 たとえば、 「常識への引っ張り」 「語義の曖昧性」 「否定」 「量化」 「時間順序」 「因果関係」 「視点の反転」 「質問文の前提」 「不要情報」 「典型パターンへの過剰適用」 「問題文中の誤った推論」 「もっともらしい偽証明」 「文字通り解釈すべき問題」 「とんち的解釈が必要な問題」 などを分類して、それぞれについて大量の「罠あり/罠なし」のペアを生成する。 -- 実際のChatGPTの回答 もはや恐怖すら覚える。かなり抽象度の異なる項目を14個も並列で列挙している。本来ならもう少し分類して提示するべきものであるのに、量でごまかそうとしているのが見て取れる。 平易な単語を組み合わせて表現するよりも、意味の強い1単語で表現しようとする LLMは、人間ならば簡単な言葉の組み合わせで表現するような場合でも、その状況をより的確に表す、情報密度の高い1単語で表現しようとする傾向にある。その結果、英語ではラテン語由来の言葉、日本語では二字熟語の多用として現れる。 無駄な確認作業を減らし、部署同士の連絡をスムーズにすることで、仕事が途切れず早く終わるようになります。 ↓ 冗長なプロセスを排除し、部門間の連携を円滑化することで、業務の停滞を打破し、リードタイムを極小化します。 "We need to work together to speed up the process and get rid of useless steps." (プロセスをスピードアップし、無駄なステップをなくすために、力を合わせる必要があります。) ↓ "We must collaborate to accelerate the process and eliminate redundant steps." これは結構わかりやすいと思う。 原因の推測(細かい話なので読まなくていい) よくある説明として、「RLHF(モデルの調整段階)でそういう言葉を多用した方が賢そうに見えるので高く評価される」というものがあるが、私はそうとは限らないと考える。むしろ、サンプリングプロセスの安定性が重要だと考えている。こういう意味の強い1語(ex. "eliminate")でバシッと出力した方が、汎用性の高い単語の組み合わせ(ex. "get rid of")よりも途中でミスる確率が低いため選ばれやすいのではないか? 動詞を比喩的な意味で使用する 動詞には、そのままの用法と、比喩的な用法がある。本来は物理的・身体的・視覚的な動作を表す動詞を、抽象的な概念・組織などに適用するというものだ(言語学的にドンピシャな概念があるのかもしれないけど、知らない)。 本プロジェクトでは、レガシーシステムに眠る膨大なデータを掘り起こし、部署間に存在する断絶を埋め合わせます。変化の激しい市場環境を乗りこなすための基盤を整え、組織全体にイノベーションを芽吹かせていきます。 こういうのを見ると、ドラマチックだなぁという感想は抱くが、具体的に何をするのか、よくわからなくなる。 「実装に寄せる」「実務で回す」みたいな表現はChatGPTが滅茶苦茶使う。あと、「死ぬ」も好きで、「個性が死ぬ」みたいな表現を多用する。 こういう風になるのは、英語圏の癖をそのまま持ってきているのが原因の一つと考えられる。他にも理由はあるかもしれない。 プロンプトの指示を守ったことをアピールするため、プロンプトの指示の一部をコピペして実際の文章に含める これは、AIが「ご指示に従って書き換えてみました」みたいに言ってる部分が文章に混入する、ということを言ってるのではない。実際の本文そのものに、プロンプトの指示が含まれてしまうことを言っている。 例えばこんなやり取り。 指示:「客観的な視点と論理的な構成を意識した小論文にしてください」 本稿では、環境問題に対して客観的な視点からアプローチを試みます。まず、現在の状況を論理的な構成に基づいて整理することが重要です。客観的な視点を維持することは、本テーマを議論する上で不可欠です。…… 「客観的な視点」や「論理的な構成」というのはAI向けの指示文なのに、それを本文にわざわざ含めてしまうのだ。LLMの仕組み上、一回出た言葉の生成確率は高くなるし、プロンプトの指示文に出てきた表現をそのまま使えば、関連性(指示追従性?)が自動的に高くなるわけだ。楽な仕事ですね。 まとめ 雑に列挙しただけだが、どうだろうか。割と覚えがある人はいるんじゃないだろうか? もう少しありそうだし、統合できるものもありそうだ。抽象度もバラバラな気がする。まだまだこのリストは更新の余地がある。 単語・構文などの表面的なAIっぽさパターンは、その背後にある本質的な問題の表出にすぎない。そのパターンを消すだけでは、AIっぽさは消えないのだ。ただし、表面的なパターンを観察することで、何が本質的な問題なのかを考察するヒントにはできるかもしれない。そういうことについて少し考えてみた次第だ。 これを用いて、新しいHumanizer系のスキルが作れないだろうか。表面的なパターンに縛られない、より本質的なAIらしさを消すようなものが。 なんなら「ここはお前が書け」とAI側から注文してくるのでもいい。前述のとおり、推測で当たり障りないうっすいこと書いてるなってことはよくあり、そこは情報を与えないとどうしようもないからだ。 AIっぽさを単に消すだけの技術は、検出逃れとしてあまり良くない印象を持たれることもある。しかし、そもそもAIの文章が良くない理由は、こういった理解しづらさにあったりもするのだ。本記事で挙げたような抽象的な問題に注目してAIの出力を改善していけば、もはやAIだろうが関係ない、普通に質の高い文章として認めてもいいレベルに達するかもしれない。だからこそ、そういうアプローチは重要なのである。 ---------------------------------------- - タイトル: 「AIっぽい文章」とは何かについてド素人が本気で考えてみた - 著者: 千本槍みなも@ナタクラゲ - 作成年: 2026 - URL: https://blog.natakurage.cc/articles/think-about-ai-text - ライセンス: CC BY-SA 4.0