「好きなもの」と「好きでありたいもの」


タイトルの2つは同じようでいて、実は少し違うものである。「好きなもの」というのは、どちらかというと直感や本能的に「好きだ」と感じるもの。「好きでありたいもの」というのは、社会的というか信条的に、これが好きである自分が望ましい、と感じている状態のことである。

普通に何かを好きになっているとき、2つのどちらも感じていると思われるが、人によって、対象によって、その割合にはばらつきがある。

理想的には、「好きなもの」と「好きでありたいもの」が一致しているのがいい。しかし、そうはならないこともある。「こんなもの好きになりたくないのに、なぜかハマってしまう」という心理はあるだろう。これは「好きなもの」であるが「好きになりたくないもの」であるという状態。逆に、「好きになりたいのにどうしても受け付けない」というものもあり、これは「好きになりたいもの」だが「好きではないもの」という状態である。

この不協和は、たいてい無意識のうちにどちらかを諦めることで解決される。しかし、そういう状態が長く続くこともあり、悩みとして表面化することもある。

そんな場合は、これは個人的な考えだが、「好きなもの」を重視したほうが良いと思う。「好きでありたい」という気持ちは、あまり信用できるものではないからだ。好き嫌いは社会的な要素も大きいらしい。特定のものを好きであることによって、他人からいい目で見られようとすることはもちろん、内面的にも自分のアイデンティティを保持するといった心理があるのだ。私は本当の好き嫌いは純粋に脳のブラックボックスで、理由なしに出てくる感情こそが本物だと思っているから、そういう外的要因になるべく左右されたくないという気持ちがある。

もちろん両者が一致していれば一番いいので、「好きになりたい」という気持ちがあるからと言って嫌いになろうとする必要はない。

いろいろ書いたが私がここで言いたいのは「好きなもの」と「好きでありたいもの」は違うんだということだけである。これを覚えておくといろんな自分の行動に説明がつくんじゃないかと思う。