罪の意識がない人は悪いのか


某漫画(私は未読)のセリフに似たようなものがあるらしいが。

「自分の罪の悪さを理解していない人は、非常に悪質である」という考え方が、おそらく世間で一般的なのではないかと思う。事実、被告人が反省していると情状酌量として減刑されることがある。

ところが、一度よく考えてみると、このことは自明ではないように思う。

例えば、先天的に罪の意識が全くない人を考える。いわゆるサイコパスなどと呼ばれている人である。そういう人は、罪を悪いことだと認識する能力を欠いている。したがって、「罪を犯さないこと」に、一般人よりも困難を伴うということになる。つまり、罪を犯すのに自由意志の介在する度合いが、一般人よりも低いということである。

そこまで極端でなくても、罪を感じにくければ感じにくいほど、自らの制御の範囲を超えたところで罪を犯す確率は高くなる。

はたして、そのような人を殊更に非難したり、重い罰を与えることが、倫理的によい選択なのだろうか?

もちろん、罪の意識がない人は、再び同じことを犯す可能性が高いという意味で、「実利的な」面から厳罰に処することは「有用」である。しかし、その損得的価値判断を超えて、善悪という立場から見たときにどうかというのは、私には疑問なのである。