その昔、山姥が出ると謂われた山に、3人の若い男たちが向かった。目的はもちろん鬼退治だった。数刻の後、山の奥のほうから激しい地響きのような音が一瞬聞こえたかと思うと、何かが山から降りてきて、ふもとの村で暴れはじめた。塊はその姿を見た者の命を次々に刈り取った。あまりの事態に近くの神社の陰陽師が向かったが、皆返り討ちに遭って死んでしまったという。その中で唯一、全盲の陰陽師だけが襲われず、彼が塊を神社に封印した。それからというもの、神社にはそれまで全く関係のなかった海月の意匠があちこちに表れるようになり、いつしか神社の名前も海月神社に変わってしまったのだそうだ。
その神社には今もその怪異が封印されているという。怪異の姿を見た者はひとり残らず殺されており、見た目に関する情報は何も残っていない。姿の他に、誰かがその怪異に名前をつけ、それを呼んだ者も殺されたという記録もある。その名前も歴史から消えてしまっているが、どこかには残っているかもしれない……。