ギターって楽器の中でもかなりポピュラーで、趣味でやってる人/やろうとしてる人も多いですよね。
でも、同時に挫折する人が多い楽器でもあります。正月に、「今年こそ何かを成し遂げるんだ!」と一念発起して購入したギターも、気づけばインテリアになっているという人も多いでしょう。あるいはタンスの肥やしになって、世帯レベルの食料自給率100%を達成できるほどになっているかもしれません。
なぜ挫折してしまうのでしょう? 私が思うに、挫折には必ず理由があります。今回は、「どうすれば挫折できるのか」を考えることによって、逆説的に挫折しない方法を紐解いてみましょう。
※ここでは、基本的にエレキギターを想定していますが、アコースティックギターにも適用できることも多いと思います。
1. Cコードから始める
挫折といえばFコードじゃないの? と思うかもしれませんが。
最初に練習するコードとして選ばれやすいのがCコードです。なぜならドレミファソラシドのドに相当するコードだからですね。
しかし、はっきり言って、Cコードは難しいです。初心者が最初にやることとしては。
これと似た例が、ひらがなの「あ」です。考えてみれば「あ」って、最初の文字のくせに、やたら複雑で難しいですよね。実際私もおぼろげながらあるんです、「あ」を習ったのは終盤だったような記憶が。
それと同じで、コードもCからはやめたほうがいいと思います。多分Cから始まるのってピアノの都合なのではないでしょうか? 音楽史とかに明るくないので詳しいことはわかりませんが。ギターにはギターのやり方があるのです。
世の常として、難しいことを最初からやろうとすると高確率で挫折します。これは万物に普遍的な法則です。ユークリッド原論にもプリンキピアにも、古事記にも書いてあります。
じゃあどのコードから始めるのがいいのかというと、例えばEですね。形がシンプルで連続しているので押さえやすいです。もっと簡単なEmでもいいかもしれません。あとAも比較的かんたんです。CやGは後回しにしましょう。そして……
2. Fコードに全力を注ぐ
ついに挫折王Fの話です。Fは人差し指で全弦押さえるセーハコードなので、初心者殺しです。
ただ私は、これに全力を注ぐ必要はないと思っています。全力を注ぐというのは、弾けるようになるまでFコードの練習しかしないといったことです。
もちろんギターをマスターするにはいつかは弾けなければいけないし、セーハコードはFに限ったものではないので弾ける意味はあるのですが、だからといって「Fが弾けないからギターが弾けない」と考えるのは早すぎます。
できそうでできないことが目の前にあると、できるようになるまでやりたくなるのが人間です。しかし、ここはぐっと堪えて、Fにこだわるのはやめましょう。
ではどうすればいいかというと、パワーコードで代用しましょう。パワーコードとは、1度と5度の音だけでできているコードのことで、3度の音がないため、メジャー感もマイナー感もない(あるいはある)コードのことです。これは抑え方がめちゃくちゃ簡単なので初心者でもすぐ出来るようになります。
そんなのズルじゃないかと思うかもしれません。ズルではありません。Fをパワーコードにしただけで、「音楽じゃなくなる」でしょうか? たしかにギターだけで聴けば物足りないかもしれませんが、バンドの中で聴いたり、歌と合わせてしまえば、まあ誤魔化せます。
場合によっては、3度の音が邪魔になることもあります。エフェクターで激しく歪ませる場合などがそうです。特にハードロックやヘヴィメタルというジャンルではパワーコードが多用されます。
とにかくFコードにこだわらないほうが幸せです。少しずつ出来るようになればいいのです。
3. 基礎練習「しか」しない(曲を弾かない)
基礎練習は大事ですが、それだけだとつまらないものです。音楽は時間芸術なので、曲という大きな流れがあって初めて真に輝くものです。
うまくなろうとするのはいいことですが、その前に挫折してしまっては何の意味もありません。
どうしても基礎練習したいという方は、基礎練習を曲にしてしまいましょう。例として、後世に絶大な影響を与えたギタリストであるエディ・ヴァン・ヘイレンは、個人的な練習で弾いていたフレーズがアルバムに収録され、その後のギター史を一新することになります。考えてみれば、クラシックには練習曲(エチュード)と呼ばれるものがたくさんありますね。
なのでとにかく曲を弾きましょう。今どき練習曲はネットを探せばいろいろあるでしょう。好きな曲のコードを弾いてみるだけでもいいです。J-POPなどは難しいコードが多いですが、簡略化しても構いません。「何々 on 何々」みたいなコード、ありますよね。全部無視して分子だけ弾きましょう。バスケットボールじゃないんだから。
ただし、自分の実力に対してあまりにも簡単すぎる曲しかやらないのは、それはそれで問題かもしれません(成長したいと思うならば)。私がそれです。私は速弾きが苦手です。簡単なソロしか練習しないので、メタル好きなのに未だにCrazy Trainも、Painkillerも、Highway Starすら弾けません。リズムギターだけでも楽しいのでいいのですがいつかはMaster, Master!したいと思っています。
4. 原曲の弾き方にこだわる
やってしまいがちですが、原曲の弾き方と同じでなければいけない理由はありません。ニュアンスの付け方などを学ぶのはいいことですが、全く同じにしなければいけないというわけではありません。
全く同じだったら個性がなくてつまらないと考えることすらできます。他人と違うからアーティストなのです。
それに、全く同じにすることなんて不可能です。機材も違いますし、環境も違います。弾き方の癖、生きてきた人生も違います。それで同じものを再現することは不可能です。中華料理屋の厨房で使われるテクニックを家庭のコンロでやろうとしてもうまくいかないように。
Tab譜の通りに弾く必要もありません。あれはそもそも殆どの場合、本人以外の誰かが採譜しているだけですから、本人がやっていること、本人の意図とは違う譜面になっていることも多いです。譜によってもクオリティは違っていて、めちゃくちゃ細かいニュアンスまで表現しているのもあれば、なんとなくなぞっているだけのものもあります。
ただ、皆さんの中には、あるアーティストが好きすぎて、ギターのモデルもエフェクターも、服も、ヒゲの剃り方まで同じにしたいという人がいるかもしれません。そこまでの愛があるなら、私は止めません。めちゃくちゃクオリティの高いコピーで、人を感動させてみてください。
5. 「効率のいい練習法」「やってはいけない練習法」をいつまでも調べ続ける
たまに見ますが、多分これが一番効率悪いと思います。確かに練習法に効率の違いはあるのかもしれませんが、どんな方法でもやってマイナスになることはないと思います。
そもそもそういうのを調べるのは「うまくなりたいから」ではなく、「自分の行っていることが正しいかどうか不安だから」「今までの努力を馬鹿にされたくないから」 です。しかも発信する側もそういう心理を巧妙に付いてきて再生数/閲覧数を伸ばそうとします。その構造に気づきましょう。
コツを調べるのは悪くないですが、沼にハマり続けるのは避けましょう。受験でも参考書をやらないまま買いまくるのはよくないと言われます。同様に、ただ情報を摂取しつづけるのではなく自分で試しながら練習していきましょう。なんならこの記事もここで閉じてもらって結構です。
ただ一つあるとすれば、体に悪い練習方法みたいなのはあるかもしれません。座ってギターを弾いている場合、猫背になりがちですが、これはいろいろな不調の原因になるので、猫背にはならないほうがいいかもしれません。また、フォームがおかしいと腱鞘炎になりやすいので、そこは気をつけたほうがいいと思います。
6. Yahoo!知恵袋を見る
ギターのことをネットで検索したら、Yahoo知恵袋が出てきたという経験は誰しもあるでしょう。中には煽情的な質問もあるのでついクリックしたくなります。
悪いことはいいません。やめておきましょう。
Yahoo知恵袋はギタリストにとって最悪の場所です。あそこはこじらせたおじさんたちの魔窟であり、見てるだけで下手になります。 前項とも繋がりますが、あそこを見るのは特によくないです。
初心者の頃あそこで「初めて数年は基礎練習以外するな」という回答を見ました。絶対的な嘘です。ChatGPTの回答をGoogle翻訳で日本語→フランス語→韓国語→アラビア語→タイ語→ドイツ語→日本語の順で翻訳し、紙に印刷して小学生に書き写させ、それを逆立ちしながら読む方がまだ信用できます。
文句を言うのがこの記事の目的ではないのでこれくらいにしておきますが、サイトブロックの拡張機能を入れることを検討してもいいかもしれません。
結び
音楽に正解はありません。それを口で言うのは簡単ですが、本当に実践できているのかという話です。知らず知らずのうちに「正解」を求めてはいませんか?
ギターには挫折ポイントがたくさんありますが、結局のところ、挫折しないためには「楽しむこと」がいちばん重要です。とはいえ、「楽しまなきゃ」と思うのもまた楽しくありません。そういうときは一旦ギターを置いてみてもいいのかもしれません。私も小さい頃からギターに触れていましたが、何回かやめています。
でも、思い出したときにまたふとギターを手にとってみてください。いつか何かが反転して、やめたくてもやめられなくなるときがくるかもしれません。
楽しもうね!