Sublimia - Mockpedia

avatar icon
千本槍みなも@ナタクラゲ

Sublimia(サブリミア)は、株式会社リミナルクリエイトが運営していたバーチャルYouTuber事務所、カルト組織。徐々に先鋭化していき、最終的に所属タレント4名と数十人の視聴者が集団自殺する事件を引き起こした。現在は運営会社が解散しており、事実上消滅状態にある。

VTuber事務所としての沿革

2019年、植田・サヴァール・直道(本名・遠藤大海)は上山学園大学文学部哲学科を卒業し、地方のIT企業に就職するが、1年で退職。1年以上の空白期間を経て、2022年に文学科の友人であった桜田寛人と共同で株式会社リミナルクリエイトを設立した。同時に主要事業として立ち上げたのがVTuberグループSublimiaであった。同年試験的に植田自身が演じる(バ美肉)VTuberである「世迷ゴト」がYouTube上で活動を開始。後に見られる世界観や思想性の片鱗は見られるものの、目立った反応は得られなかった。ここで「やはりタレントを充実させる必要がある」と考えた植田はオーディションを行い、2023年に地我イア、倉井ヨル、尾崎マクラ、無限アイ、奈落ソコをデビューさせる。

動画や配信に巧妙に仕組まれた伏線や、そこから浮かび上がる深遠な世界観、公式サイトに含まれるメディアミックス的なギミックが話題となり、ある種の代替現実ゲームとして各種メディアで取り上げられた。VTuber評論家のかりんりんは「不穏な世界観がにおわされているVTuberは過去にも何人か存在していたが、ここまで大規模かつ巧妙なものは他に類を見ない」と述べている。一方で「その面白さは(中略)あくまで普段の配信があってのものだ。その点で彼女らは単なるギミックに終始しない世界観の演出に成功している」と評した。これらの反応に対し、植田は月刊サイバーカルチャー誌のインタービューに応じ、「我々は視聴者に"物語"ではなく"真理"を提供する」と語っていた。

先鋭化

2025年4月、プレスリリースにおいて初のグッズ販売が予告される。プレスリリース内ではグッズの詳細は明かされなかったが、翌日世迷ゴトのYouTubeチャンネルが突然更新される。「啓示のお知らせ」と称したその動画内でグッズの詳細が明かされ、血液と似た色の液体が入った瓶や猫の死骸を模した人形が含まれていることが判明し、SNS上で物議を醸す。同じ頃、所属タレントに対する誹謗中傷についての警告文を掲載。悪質な書き込みをした者の特定作業を開始していることを発表した。

プラットフォーム追放

2027年4月5日、尾崎マクラのYouTubeチャンネルが「未成年への悪影響」を理由に停止される。同年8月にかけて所属タレントが次々とYouTubeチャンネル、Xアカウントを停止された。この事態を受けてリミナルクリエイトは完全独自プラットフォーム「ArkNet」を設立。配信機能とマイクロブログを統合し、よりタレントとファンの距離感が密接になる環境が整えられた。ArkNetではマイクロブログへの投稿やライバーの配信に対して共通通貨「Toku」によるいわゆる投げ銭機能が実装されており、使用額が多いほどランクが上がり限定配信の視聴権などの報酬が与えられる仕組みになっていた。

カルト化

2028年9月上旬ごろ、桜田の名前がリミナルクリエイト公式サイトから削除されていることが判明。この時点で既に退社していたとされる。同時期からArkNet内部の投稿がSNS上に断続的に流出し、自傷行為や動物への虐待が「推し活」とされている実態が明らかとなる。リミナルクリエイトは公式サイトに声明を掲載し「投稿はあくまでもユーザーの責任であり運営は不適切な投稿を見つけ次第対応している」「違法な行為を推奨するようなことはしていない」と主張したうえで、「ArkNetの投稿は利用規約により外部への転載が禁止されている」と警告した。

Sublimia集団自殺事件

終末期におけるArkNetでは、植田はまさに教祖のように扱われ、すべての投稿がコミュニティによって詳細に分析されるなど、真理として絶対視されていた。ライバーたちの配信もゲーム実況や雑談といったエンタメ的な内容はほぼ消え、植田の思想をそのままファンに伝えるようなものとなっていた。ライバーの「お願い」と称した呼びかけによりファンがあらゆる行動を取る構造が完成していた。Tokuによる投げ銭は信心の深さを示す絶対的な指標となっており、ファンはより多くTokuを投げること、ライバーはより多くTokuを受け取ることに熱中していたという。

「【最終回】みんなで、ひとつに。」と題したオフラインイベントが開催され、15人のライバーと1500人のファンが一堂に会した。またオンライン同時配信も行われ、最大同時接続数は12万人を超えていた。会場では別室で音声が繋がったすべてのライバーが一言ずつ「来世での抱負」を語ったのち、植田が登壇する。その後植田の合図によりファンが一斉にサイリウムを割り、中の液体を摂取した。このサイリウムはArkNetで販売されていたもので、致死量の10倍を超えるアコニチンが含まれていたことが後の捜査で判明している。これにより来場者の大半が死亡。オンライン視聴者の中にも多数の自殺者が出た。最終的な死者数は8000人を超えると見積もられている。またライバーもほとんどが毒物を摂取し、摂取した者全員が死亡した。当初、植田は多くのライバーの死を見届けた後に無言で毒物を摂取して死亡したとされていたが、後述するように実際には一部のライバーとのやりとりがあったとされる。また、死者の全員が自主的に毒物を摂取したわけではなく、近くの人に無理やり飲まされた者もいたという目撃情報もある。

一方、来場者の中にもサイリウムを持参していなかった者、持参していたが摂取しなかった者、摂取量が少なく病院に搬送された後に一命を取り留めた者も少数ながら存在した。またライバーの中でも尾崎マクラを含む3名が毒物を摂取せず生存した。そのうち尾崎マクラを除く2名は殺人罪(間接正犯)により逮捕され、2032年5月現在も審理中である。

この事件は海外でも報道され、アメリカのメディアでは1978年に起きた人民寺院による集団自殺事件にちなみ「21世紀のクールエイド事件」と報じられている。

事件後の動向と解散

事件発生後、直ちに警察による捜査が開始された。警視庁はオフライン・オンラインを合わせて数千人規模の死者が出た未曾有の事態を受け、3時間という速さで特別捜査本部を設置。同日、株式会社リミナルクリエイトの本社所在地に家宅捜索が入り、ArkNetの業務サーバーを含む一切の資料が押収された。代表者である植田の死亡と、残された数名の従業員も重要参考人として連行されたことで、同社は即日、事実上その機能を停止した。

捜査の一環として押収された独自プラットフォーム「ArkNet」の5か月に及ぶ解析により、植田を頂点とした強固なマインドコントロールの実態や、ArkNet内部で自傷行為などが常態化していた事実、そして集団自殺事件が周到に計画されていたことが裏付けられた。一方、生存した尾崎マクラを含むライバーやファンは被害者として保護されると同時に、自殺幇助の疑いも視野に置かれ、重要参考人として捜査対象となった。

社会的・法的責任の追及も本格化する。事件の犠牲者遺族の一部は合同で原告団を結成し、運営会社としての安全配慮義務違反などを問い、株式会社リミナルクリエイトに対して総額4200億円にのぼる損害賠償請求訴訟を提起した。

代表者の死亡と天文学的な額の賠償請求により、株式会社リミナルクリエイトの経営破綻は決定的であった。事件から3ヶ月後、東京地方裁判所は債権者らの申し立てを受理し、同社の破産手続き開始を決定。裁判所から選任された破産管財人のもとで、会社の資産清算が進められた。Sublimia関連のキャラクター著作権や楽曲の権利なども競売にかけられたが、その事件性から買い手はつかず、資産価値は皆無に等しかったとされる。

捜査資料としての役目を終えたArkNetの全データは、二次的な被害や思想の拡散を防ぐ観点から、裁判所の厳格な監督のもとでサーバーから完全に消去された。これにより、彼らのコミュニティは物理的にも完全に消滅したと考えられていたが、一部非公式な後継コミュニティが未だにインターネット上に存在するとされる。

事件発生からおよそ1年半後、すべての資産分配と清算手続きが完了し、破産手続きは終結。株式会社リミナルクリエイトは法人登記が抹消され、名実ともに消滅した。これによりSublimiaも同時に消滅したとされる。

余波

ライバー

ライバーの中で数少ない生存者である尾崎マクラは、「もともとは純粋にファンを楽しませたいという気持ちだったが、受け取ったTokuの額で序列がつけられたことで他のライバーのファンなどから信心が足りないと非難されるようになり、配信内容に植田の思想を反映させるようになっていった」と語っている。また「彼(植田)を本気で信じたことは一度もない」とも語っている。事件の重要参考人として警察の聴取を受け、自殺ほう助の疑いもかけられたものの、ArkNetでの投稿から事件に直接関与していないと考えられたことや、来場者に毒物を飲まないように訴えかけたことで植田と口論をしていたという生存者の証言などから最終的には不起訴処分となった。しかしその後も事件に加担したなどとしてインターネット上で激しい誹謗中傷を受け、「魂」の顔や名前を含む個人情報がネット上で拡散されたという。

一連の裁判後しばらくは沈黙を守っていたが、数年後に事件のことを綴った書籍『推しに死ねと言われたら』を発表し、20万部を売り上げるベストセラーとなる。またインターネット専門のコミュニティトラブルの支援団体を設立し、インターネットにおけるコミュニティの危うさや承認欲求のもたらす悲劇についての警鐘を鳴らす言論活動を開始した。

ファンの証言

ネットメディアPutUpNewsの取材に応じたファンの証言によれば、事件における集団自殺は一種の次元上昇(アセンション)として位置づけられていたという。自分は最後までライバー個人を推しているつもりであり毒物の摂取も推し活の一つとして考えていたが、周りが続々と倒れるなかで初めて正気を取り戻したとする。そのファンの友人は自宅購入のために貯めていた貯金などすべての財産をTokuに替え、離婚までした挙句に事件の犠牲者になったと語る。

また別のファンは最初は純粋にライバーを応援しておりArkNetも登録したが、植田の思想ばかり垂れ流すようになったことで離脱したと語った。ところがその後もメールや電話で自身の推していたライバーから再びコミュニティに参加するように連絡が続き、ひどい時では1日に24件のメールが届き、10回も電話が鳴ったという。

桜田の証言

桜田はリミナルクリエイト公式サイトからの名前削除以後、公式にはメディアの取材に一切応じていない。しかし取材に成功したとするインターネットメディア・カゼのウワサまとめの主張するところによると、「非常に残念だ」と語ったという。また『推しに死ねと言われたら』の中で尾崎は、事件後に桜田と一度会っているとし、以下のようなことを語ったと回顧している。

大学時代の植田は周囲とは明らかに違う雰囲気で、まさに孤高の天才といった感じで「それこそ教祖のような」存在だったという。面白半分で彼に接触した桜田は、「これはビジネスになる」と確信し、卒業後に無職生活を送っていた植田に連絡を取り、エンタメ企業であるリミナルクリエイトを共同で設立した。当初は植田の思想をあくまでも面白い設定としてコントロールできていたが、やがて一部ライバーやファンが本気で信じはじめ、植田は暴走を始めた。グッズ販売で問題となった赤い液体は猫の血液であり、桜田は猛反対したものの植田の強い意向により販売にこぎつけた。しかしその一件から亀裂が深まり、最終的にはほとんど追い出される形で退社したのだという。

尾崎によると、桜田はまた、植田はビジネスパートナーとして最悪で、Sublimiaは明らかに持続可能なビジネスモデルではなかったとも語ったという。尾崎によれば、桜谷から事件の犠牲者に対する言及は特になく、現在は複数の企業を経営しながら生活しているという。

受容

批評家の首藤正憲は、一連の事件はインターネット時代におけるカルトが如何に広範囲かつ悲劇的な事件を引き起こしうるかを浮き彫りにしたとした。社会心理学者の植芝薫は、事件に対し「SNS時代のコンテンツ文化と過激思想の増幅が本質的には同質のものであり密接に隣接していることの証左」とし、「ほとんどすべての『推し活』は、同様の事件を引き起こす可能性を孕んでいる」と解説したが、この意見は複数の論者から反論もされている。また宗教学者の吉祥直平は、植田の思想をグノーシス主義などの過去の思想と比較し、「デジタル時代に最適化された新しい形の終末思想」と位置づけた。

ソーシャルグラフリサーチ社は、事件後のSNSの分析から、「事件を知って推し活をやめた」という声、根拠のない憶測や陰謀論、事件を茶化すような不謹慎なインターネット・ミームなどを確認した。他方で一部コミュニティが「残党」として存在しているともしている。

事件はVTuber業界全体に深刻な風評被害をもたらし、VTuber関連のテレビ番組の放送中止やスポンサーの一時停止などが発生した。これらの措置に対してはSNSを中心に過剰だとして批判もある。事件後、VTuberネットワーク各社は相次いで声明を発表し、ファンとコミュニティの健全な距離感についてのガイドラインを更新した。

関連項目

  • カルト
  • 洗脳
  • 新宗教
  • 推し活